台湾の閣僚はプロフェッショナル

日本の周辺では、台湾の取り組みが際立っている。発生地の中国本土とは百数十キロしか離れていないのに、かなりの度合いで抑え込みに成功している。

日本と台湾を比較した場合、真っ先に気付くのは政府メンバーのプロフェッショナルぶりだ。陣頭指揮を執る陳建仁・副総統は、かの米ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院で博士号を取得した人物。中央伝染病指揮センターの指揮官を務める陳時中・衛生福利部長(厚労相)の本職は歯科医師。

マスク輸出禁止や増産体制などを整えた沈栄津・経済部長(経産相)は電気工学やオートメーション化技術を学んだ元官僚。IT担当の唐鳳政務委員(無任所大臣)は「天才プログラマー」と言われ、マスクの在庫一覧システムを作るための情報を民間企業に公開し、政府情報を市民らに効率よく伝えた。

各分野で十分な実務経験を持ち、実力者のネットワークに入っているようなプロフェッショナルが実務のトップを務めたことで、的確な判断を迅速に下し、即座に行動に移すことが可能となった。

台湾は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)感染拡大の際、多くの犠牲者を出した。その教訓により、04年に米疾病対策センター(CDC)を参考にした防疫の司令塔機関「国家衛生センター」(NHCC)を設置するなど、緊急事態に即応できる体制が整えられた。今回も初動対応をこのNHCCが担ったのだ。

強権で抑え込む中国

新型コロナウイルスは中国湖北省武漢で集団感染が始まった。患者が極端に増えて医療態勢が破綻した結果、中国は強引に「都市封鎖」という抑制策に踏み切った。

同時に湖北省を中心にスマホを使った「健康QRコード」のシステムを導入し、利用者の個人情報と移動経路・通信相手・健康状態などをつなぎ、ビッグデータで解析することで健康状態を監視している。

中国では個人の自由が制限され、ネット上のやり取りも管理されている。それぞれのスマホは身分証とひも付けられ、中国政府が問題視するような発言を書き込めば、身元が特定されて摘発される。

ただ健康QRコードに関して、中国人の間で不満や懸念の声はほとんど聞かれない。むしろネット上には「便利だ」「自分が感染していないことを証明してくれる」という評価の声が多くみられる。

そもそも、中国人には、アプリを使って便利な生活を送ることと引き換えに個人情報を提供しているという感覚がある。今回のように新型コロナウイルスの感染者追跡・封じ込めに有用であれば、その利用に個人情報が使われることを寛大に受け止めている。

一方、政府による情報開示には市民は根強い不満を抱いている。武漢当局が昨年12月30日に「原因不明の肺炎患者確認」と発表したのに、中央政府が本格的に対応したのは1月20日以後。それまでに政府がしかるべき措置を取っていれば、感染拡大は食い止められたという悔しさが市民の側に広がる。だがこういう声は当局によって排除される。

中国では共産党独裁、さらに習近平国家主席の「一強」という極端な強権であるため、強硬措置を取りやすい。だが感染力のある無症状感染者への対策が抜け落ちるなど不十分な点もあり、当局が宣伝するように「新型コロナウイルスを抑え込んでいる」という状況には達していないようだ。