インドネシアでは死者数が急増
マレーシアの周辺の国々でも、新型コロナは大きな脅威になっており、その感染拡大の状況でも明暗が分かれている。世界最大のイスラム教人口を抱え、約2億6000万人の人口の約 87%がイスラム教徒であるインドネシアでは、マレーシアほどの迅速な活動制限をしてこなかった。シンガポールやマレーシアで感染者が確認され始めた2月当初から3月初めまでは感染者ゼロの状態が続いていたこともあり、テラワン保健相は「祈りのおかげだ」と豪語していた。しかし、その後、感染者数は急速に拡大し続け、現在新型コロナウイルスが原因の死亡者数は東南アジア諸国連合(ASEAN)で最多の973人(5月11日時点)を記録している。
首都ジャカルタでは、4月10日から14日間の予定であった「大規模な社会的制限」を、5月22日まで延長することを発表。「経済が死んでも立て直せるが、市民が死んでしまったら経済は立て直せない」との声も次々と地方などから上がっている。巨大人口を抱えるインドネシアで感染爆発が加速する事態を起こさないかどうか、世界保健機関(WHO)も懸念を高めている。
シンガポールでも新型コロナ対策では苦戦気味だ。流行当初は感染者と濃厚接触者を素早く特定し、厳しく監視することで感染拡大を抑制し、高度な医療水準と相まって「東南アジアの優等生」と高く評価されてきたが、最近、異変が起きている。4月以降、急速に感染者数が拡大しているのだ。その背景には、相部屋で集団生活を送る外国人労働者らの大規模感染が相次いでいることが挙げられる。
シンガポールでは、建設現場などにおいて、低賃金で肉体労働をする「ブルーカラー」と呼ばれる外国人労働者が、インドやバングラデシュなどから約30万人が派遣されているとされる。トイレや洗面台などを共有で使用し、衛生状況が悪い密集した空間で暮らす外国人労働者の間で感染が拡大する危険性はもともと人権団体などの間で早くから懸念されていた。外国人労働者の宿舎における感染拡大はいまだ収束の兆しを見せておらず、一旦、感染封じ込めに成功したと見えた国が、一転して感染拡大の一途をたどるケースもあることを示している。
東南アジアでは、マレーシア以外でも、ベトナムやタイなどでも感染者の抑え込みに成功していると見られる国もある。ただ、多くの人口を有する国を抱え、医療体制が脆弱なエリアも少なくない東南アジアの新型コロナの感染動向は世界から注視されている。
バナー写真=マレーシア国内では、「Covid19に共に立ち向かおう 国家の“フロントランナー”に感謝」と大きく書かれたポスターなどがいたるところに掲げられ、国民の団結を高めている(筆者撮影)
