尾道で高まる台湾熱。市政120周年記念の街フェステーマも「台湾」

小津安二郎監督の映画『東京物語』で知られる浄土寺や千光寺といった名刹(めいさつ)や今年亡くなった尾道出身の大林宣彦監督映画『時をかける少女』『転校生』『さびしんぼう』のロケ地などがあり、昔から観光地として人気の尾道。開港から850年、繁栄と共に山の斜面に住宅や別荘がびっしりと建てられたまちは、瀬戸内海に面した複雑な地形を住みこなす人の知恵と、伝統文化の中で培われた職人の技術が合わさったユニークな建造物の宝庫である。

だが、日本のどの地域もが抱える空き家問題は、尾道とて例外ではない。車が入れないほど狭い道に沿ってひしめく尾道の家は、一旦空き家になれば壊して建て直すことも不可能なうえ、駐車場にも利用できず、負のレガシーとして承継者に重くのしかかっている。

それを地域の財産に転化しようと奮闘してきたのが、2007年創設の「尾道空き家再生プロジェクト」だ。尾道しから2009年より「空き家バンク」事業を受託し、空き家と移住希望者とのマッチング事業を展開するほか、坂の中にあるモデルハウスでの移住体験サービスも備えている。商店街にある町屋をゲストハウスとしてよみがえらせた「あなごのねどこ」やカフェ、工房、ギャラリーといった多彩なテナントの入る「三軒家アパートメント」、尾道が一望できる築100年の茶園(さえん、別荘建築)を再生した宿「みはらし亭」など、18軒の特色ある物件を自ら手掛けてきた。

尾道が一望できる築100年の茶園を再生した宿「みはらし亭」
築100年の茶園を再生した宿・みはらし亭(上の写真「尾道空き家再生プロジェクト」提供)から尾道のまちと海をみわたす(下の写真は筆者提供)

今回の「尾道的台灣小宇宙」も、かつて旅館の離れだった宴会場を3年がかりで再生、ようやく完成した「松翠園大広間」のお披露目を兼ねたイベントだった。でも、なぜテーマが「台湾」なのか? 2019年に惜しまれつつ閉店した尾道ラーメンの老舗「朱華園」のオーナーが台湾出身なことは知っているが・・・。

企画した理由について豊田さんは、「なぜだか、尾道の人は前から台湾が大好きなんですよ!」と笑った。

尾道と対岸の今治とを結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」でサイクル・ツーリズムを推進したのは世界的な台湾の自転車メーカーGIANT社だった。市内の小・中学校でも台湾との交流が活発になっていること、台湾料理店も開店して繁盛していること、商店街の老舗のお茶屋さんで台湾茶を扱っている、台湾風の活版印刷サービスを備えたショップがあるなど、個人、企業、教育、行政など、さまざまなレベルで尾道における台湾熱は徐々に高まった。2018年市政120周年を記念する街フェスのテーマも「台湾」だったと豊田さんはいう。

台湾の国民的スター、盧廣仲(クラウド・ルー)のプロモーションビデオも尾道で撮影され、豊田さんらが運営する「あなごのねどこ」も登場して、台湾の若い個人客にぐっとアピールした。ここ5年ほど毎年インバウンド1位は台湾からの観光客という「あなごのねどこ」、「みはらし亭」の2軒のゲストハウスでは、寝る場所と朝食を無料提供する代わりに、宿の掃除などを手伝ってもらう「ヘルパーさん」を随時受け入れ、台湾からの応募者も多い。