バリ島の狂犬病撲滅のために日本でアクションを
——インドネシアのバリ島で狂犬病の撲滅活動に協力しているとのことですが、そのきっかけは。
徳田 熊本県とバリ州が2017年に国際交流促進の「MOU(基本合意書)」を締結したのをきっかけに、バリ州の知事が竜之介動物病院を訪れ、バリ島でまん延している狂犬病を撲滅させるために協力してほしいと頼まれました。バリ島では狂犬病予防注射への理解や接種がなかなか進みません。一方、日本はバリ島と同じように海に囲まれた島国ですが、狂犬病を撲滅させた「清浄国」です。犬に予防接種をして避妊手術をすれば、狂犬病がそれ以上増えることはありません。海に囲まれているので外部から病気が侵入することも防げます。日本はそうやって清浄国になれたのです。バリ島でも、ともかく予防接種と避妊手術の必要性を住民に教育しなければならない。そのためにはまず関心を持ってもらうことが大切だと痛感しました。
——関心を引くための手段として狂犬病撲滅のリストバントを作ったのですか。
徳田 バリ島の狂犬病撲滅のためのPRと資金作りに活用するために作りました。ブルーのリストバンドに白字で「Eradication of Rabies(狂犬病撲滅)」と書いてあります。1個300円で販売し、3000個が売れました。活動をするためには何かアクションを起こさないといけないと思ったからです。動物のために役に立ちたいと思っている人たちに実情を知ってもらい、リストバンドを買って身に着けることで啓もう活動になります。日本でアクションを起こせば、バリの人たちを動かすことができると信じています。日本の獣医師として活動を通じて世界に発信し、狂犬病撲滅に取り組んでいきたいと思っています。日本でできたことは必ずバリ島でもできるはずです。
野良猫への愛ある対応が地域社会を変える
——狂犬病撲滅運動の他にも「TNR」活動に取り組んでいるそうですが、どのような活動ですか。
徳田 TNRは「Trap(捕獲)」「 Neuter(去勢・避妊手術)」「 Return(元の場所に戻す)」の頭文字を取ったものです。野良猫の数が増えないように捕獲した猫に去勢・避妊手術を施した後に元の場所に戻すという活動で、世界共通語になっています。野良猫が増えると、ふん尿による悪臭や生ごみをあさって散らかしたり、車やバイクの上に乗って汚れや傷をつけたりして、近隣が迷惑します。猫の数を増やさないための取り組みがTNR活動です。捕獲された猫を病院に連れてきてもらい、私が手術をした後、数日間様子を見てから元に戻す活動をしています。猫嫌いの人や猫に関心のなかった人が野良猫の対処に困って渋々活動を始めたものの、参加するとやりがいを感じて動物に愛情を感じるようになるケースがたくさんあるのが興味深いですね。たくさんの人たちがTNRに賛同して協力することで地域にコミュニケーションが生まれ、地域社会の活性化につながっている。動物によって人が、地域が良い方向に変われることを実感しています。
——今後、どんなことに取り組みますか。
徳田 ペットの命の価値を高めていきたいと思います。私の動物病院に併設している「学校法人昭徳学園九州動物学院」では、学生たちに人と動物は同格で、動物も社会の一員であることを教えています。生きようとする「動物のために」、動物と共に生きる「人のために」、動物と人が暮らす「社会のために」、人間と動物の「QOL」(Quality Of Life:生活の質)の向上を目指したい。そのためには、地域の動物病院が動物に関する全ての情報発信基地として機能していく必要があります。私は崖っぷちに追い込まれるほど燃えるタイプなので、必要とされる限りは全力を尽くしたいと思います。
インタビュー・文=片岡 優佳
バナー写真=徳田竜之介獣医師と「供血犬」の土佐犬「サイゴー」。輸血が必要な犬が出た際に血を供給する役割を担う。
写真提供=竜之介動物病院



