「香港アイデンティティー」の台頭

しかし、香港で雨傘運動前後から起きた「香港アイデンティティー」を根っこに持つ運動で、「香港は香港、中国とは違う」という信条を抱く「本土派」と呼ばれる多くの若者を生み出し、中年以上の「中国人であり、香港人でもある」と考える人々と、同じ民主主義を求めていても、ベクトルを大きく変えることになった。

この香港社会の「台湾化」現象の顕在化は、タイミングとしては、中国の習近平政権の登場と軌を一にする。「中華民族の偉大なる復興」を掲げながら、その重要な両翼を担うべき台湾と香港が、中国にノーを突きつける勢力として形成されつつあるのは皮肉としか言えない事態だが、その原因部分には、対外強硬姿勢を取り、香港や台湾のニーズに対して前の胡錦濤政権に比べていささか敏感さの乏しいその政治手法が陰に陽に影響を及ぼしていることは間違いない。少なくとも「民主」や「自由」の価値観に生きる人々にとって、書店関係者拘束事件に代表される、自分たちから遠ざかっていくようにしか見えない昨今の中国は「祖国」と思える対象ではなくなっていると言えるだろう。