異文化交流の「肝」は互いの違いを認め合うこと

2014年、西本はゲームやアニメーションの劇作家として知られる虚淵玄(うろぶち・げん)が台北アニメーション・漫画フェスティバルに招かれ、霹靂布袋劇にほれ込んだとの情報を得た。早速、虚淵の所属会社ニトロプラスとコンタクトを取り、パペットモーションの社長と一緒に会いに行った。翌年公開予定だった映画『奇人密碼―古羅布之謎―』の版権の売り込みと、虚淵に『奇人密碼』外伝の執筆打診のためだった。ところが虚淵は、自分のオリジナル作品で日本人のファンの心をつかむ、分かりやすい王道のストーリーを描きたいと返答したのだった。

その後さまざまな交渉を経て、14年に立ち上がった「サンダーボルトファンタジー」テレビドラマシリーズの日台合作プロジェクトがスタートした。合作作品ならではの良い関係が生まれ、とりわけ、キャラクター人形の製作や撮影の現場では、日本流の細部へのこだわりに、これまで自社作品にしか携わって来なかった台湾側スタッフは新鮮な刺激を多く受けた。例えば、それまでの人形では統一規格で量産された手のパーツを全てのキャラクターに使用していたが、日本側は女性の繊細な手を表現するため、手の大きさにこだわり、人形の爪にグラデーションを施したマニュキアを提案した。また、涙の粒の大きさや、戦闘シーンで傷ついたキャラクターから流れる血の位置にも細かい注文を付けた。しかし、霹靂のスタッフは虚淵を信じ、全てを受け入れた。

(c)2016 Thunderbolt Fantasy Project

こうして、16年夏に完成した日台合作の『Thunderbolt Fantasy 東離剣遊紀』は、同年7月から3カ月にわたり、日本、台湾、中国、米国で同時放送された。数々の個性的、魅力的なキャラクター、人形劇とは思えない大胆かつ繊細なアクションや豊かな表情、歴史にファンタジーが組み込まれた独特の世界観、どれもが新鮮な驚きをもって各地で迎えられた。アニメサイトのファンなどを中心に、今まで台湾の布袋劇を見たことがなかった層にも注目され、日本では「サンファン」というサンダーボルトファンタジーの略称を付け、大きな反響を呼んだ。「台湾伝統文化」と「日本コンテンツ」の融合が結実した瞬間だった。17年12月にはその外伝の『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』が、18年10月からは続編の『Thunderbolt Fantasy 東離剣遊紀 2』が放送中だ。

(c)2016-2018 Thunderbolt Fantasy Project

西本は霹靂のプロデューサーとして、日本側と交渉に当たるのが仕事だ。日本人の仕事のやり方や気持ちを理解しながらも、台湾側の考えをしっかりと伝えていかなければならない。難しい立ち位置だが、自分の役割は「言葉」だけではなく、その背景にある「文化」のトランスレーションなのだと西本はいう。

「大事なのは自分の立ち位置がブレないことです。私の仕事は、例えば、日台双方がなぜこういうのか。そのなぜをかみ砕いて説明し、細かな衝突を和解に向けて導き、パートナー同士の信頼関係を一つ一つ積み上げていく作業なのです。それでも、お互いに分かり合えないことはあります。その時は、良い意味で諦めること、お互いに違うということを認め合うことが、結局のところ異文化交流の『肝』なのだと思います」