台南散歩の醍醐味:街角の小工房の観察

プロのイラストレーターで、ものづくり全般が大好きな佐々木千絵さんが紹介してくれたのは、路上で見られる小さな工房だ。中山路の手作り帆布製品の店「合成帆布行」では、90歳のおばあさんを筆頭とする一家三代が、毎日大量の帆布カバンを積み上げた机の前で黙々と働いている。

台南の街角では他にも畳、刃物、ブリキのバケツ、紙糊と呼ばれる紙工芸など昔ながらの物を昔ながらの方法で職人が作っている光景が随所で見られる。職人の邪魔にならない程度に、こうした道端の小工房を観察するのが、台南散歩の醍醐味(だいごみ)といえる。

「合成帆布行」で作業中の90歳のおばあさん(筆者撮影)
「合成帆布行」で作業中の90歳のおばあさん(筆者撮影)

外見よりも中身を重視する価値観

「台南の人はすごくアーティスト気質。普通に生活している中でも随所に創意工夫が見られて、生活を楽しんでいるなあ、と感じます」と語るのは、台湾で実力派女優として活躍している大久保麻梨子さんだ。彼女のお気に入りはかき氷「八宝冰」の老舗、黃火木。濃厚なタロイモのペースト、粒あん、杏仁豆腐、パイナップル、ハトムギ、蓮の実、リョクトウなど十数種ある手作りの具から8つを選び、上に氷を載せ、シロップをかけて食べる。具が氷に完全に覆われているから、よく雑誌などで見かけるマンゴーかき氷のように「インスタ映え」はしないが、三代目店主の妻、方秀芬さんはいう。

「スプーンで氷の下の具をすくいながら食べていくと、氷、シロップ、具が最後まで一緒に味わえるのよ。具が氷の上にあると、後半は氷ばかりが残ってしまうでしょう」

こういう細かい配慮に、筆者は台南の人の、外見よりも中身(食べ物の場合は味とか満足感)を重視する価値観を感じるのだ。

かき氷の具材をお椀に載せる「黄火木」の二代目店主(筆者撮影)
かき氷の具材をお椀に載せる「黄火木」の店主(筆者撮影)