難しい中南部への店舗展開
台湾進出ではまず台北に出店し、その後中南部に店舗を広げていくという戦略を取る事業者が多い。しかし台湾の飲食事業者でも北部から南部と全国展開している業者は少ない。分かりやすい事例では、台北から台中は東京駅から静岡駅、台北から高雄は東京駅から名古屋駅ほどの距離がある。日本でも東京の業者が名古屋に進出するのは簡単ではなく、それが外国であればなおさら難しいのは言うまでもない。
台湾の北部と南部は気候も違い、食習慣や味付けもだいぶ違う。台湾南部の味付けは北部に比べ甘目であり、しょっぱいものへの抵抗感が強い。一つ例を挙げれば、北部と南部のチマキは別の食べ物といっていいほど違う。チェーン店だからといっても、ローカライズやローカル戦略なしに進出しても、うまくいくわけがないのである。
台湾人スタッフは、地元から離れた場所への転勤を望まないという問題がある。台北で育てた人材を会社命令として強引に中南部に異動させれば、台湾人スタッフは迷いなく辞めるだろう。そのため、現地で中心となるスタッフを育てなければならない。つまり中南部への進出は、ゼロからのスタートとあまり変わらないのである。
その難しさは実際に超有名ブランドといえるミシュラン一つ星のJapanese Soba Noodles蔦、北海道の海老ラーメンで有名な一幻拉麺や山頭火、名代富士そばなどの有名ブランド店が中南部に進出し、いずれも2年ほどで撤退しているのを見ても明らかである。超有名ブランドであっても中南部進出は容易ではないのである。順調に中南部進出をしているブランドとしては花月嵐や屯京拉麺、他業種でいえば丸亀製麺、スシローがあげられる。これらのブランドは中南部進出のために人材をしっかり育て、立地をよく吟味し慎重に進出準備をしていた形跡がうかがえる。なお2年弱で閉店が多いのは、台湾のデパート等商業施設の場合、入居する店舗は2年契約が多く、売上が上がらなければ継続を望んでも退店を迫られることもあるからである。