次の目標は和楽器の総合教室設立と邦楽ネットワークの構築

台湾での生活も9年目に入った。台北に赴任した年の夏、約束通り一緒になった夫人との間に授かった3人の子どもたちは皆、台湾生まれだ。自由度が高く、多様性がある台湾で、これからも家族と一緒に暮らしていくつもりだ。ただ、一つだけ気掛かりなことがある。

「台湾では太鼓に限らず、受け身や指示待ちの姿勢がよく見られます。ある楽曲を練習して演奏できるようになると、そこで満足してしまいがちです。より魅力的に演奏するにはどうしたら良いのか、その先にある世界を自ら探求してほしいのです」

「和太鼓熊組」の演奏(熊谷新之助氏提供)
「和太鼓熊組」の演奏(熊谷新之助氏提供)
太鼓ユニット「音阿弥(おんあみ)」(熊谷新之助氏提供)
太鼓ユニット「音阿弥(おんあみ)」(熊谷新之助氏提供)

新之助は最近、篠笛(しのぶえ)の演奏にも力を入れ始めた。台湾では和太鼓や三味線などの和楽器は、別々の教室で単体として教授されるのが通常だ。彼は和楽器の総合教室の立ち上げと台湾での邦楽ネットワークの構築を次の目標に掲げている。

最後に、最も尊敬する和太鼓奏者を尋ねると、太鼓ユニット『音阿弥(おんあみ)』で活躍し、台湾にも招請したことのある古立ケンジ、西片翠敬、江上るうの3人の名を挙げてくれた。

「古立先生からは技術に裏付けされた舞台での所作の美しさ、西片先生からは現代的な中にも和の柔らぎを表現した楽曲の独創性、江上先生からは力強さと華麗さを併せ持つ表現力を学びました。古立先生からは、台湾の環境は生ぬるいとのお叱りまでいただき、背筋が伸びました」

「常に上を向く」を信条とする熊谷新之助。5年後、10年後の彼は、どこまで師たちの背中に近づけているのだろう。筆者の新たな楽しみがもう一つ増えた。

バナー写真=熊谷新之助氏と「和太鼓熊組」のメンバー(熊谷新之助氏提供)