執筆情報に対する敬意低下を憂う

ところで、紙離れが進むと言われる出版界の将来を二瓶はどう見ているのだろうか。

「紙の本の強みはデバイスが不要なことです。作者のサインがもらえ、飛ばし読みもできます。完全には無くならないでしょう。一方、印刷が不要で人やモノのコストが抑えられるので、デジタル化は加速するでしょう。その性質上、情報は細かく切り取られ、例えば「note」のように、自分に必要な回の情報だけを買えるようになれば、消費者にとってはメリットが大きいですよね」

現在の市場設定では、紙媒体よりデジタル媒体の価格が抑えられ、購入時に二者択一を求められる。これを実店舗購入特典として、紙媒体の購入時にはいくばくかの金額をプラスすることでデジタル媒体もセットで入手できるようにし、読者による媒体の使い分けを可能とすることで実店舗とオンライン書店の両者は共存できると二瓶は考えている。また、無料の情報があふれる時代の利便性の陰で、執筆情報に対する読者の敬意の低下が著しいことには警鐘を発する。

「専門性や実績の積み重ねが反映され執筆された創作物には、その敬意の対価として著者や版元に還元される形で支払いがなされるべきです」

出版物の貸出しを目的とした図書館やレンタル書店では、貸出し回数ごとに版元に料金が還元されるか、最初から高い購入価格に設定にするなどの措置を採り、版元と実店舗を守る制度も提唱する。二瓶の出版物への愛は深い。最後に座右の銘を尋ねてみた。

「台湾に来て、トライ・アンド・エラーの精神を学びました。「中国語ジャーナル」の休刊で異動した部署では、出版業界全体の流通を理解できました。「な〜るほど・ザ・台湾」が休刊した際も、転職先では残業も無く、他の案件依頼が増え、運動の習慣もでき、健康状態は改善されました」

どんなことがあっても、落ち込み過ぎず、また慢心せず、淡々と過ごしていきたいと語ってくれた二瓶は、自らの半生を評して「人間万事塞翁が馬」と締めくくってくれた。

二瓶里美さんが手掛けた「な〜るほど・ザ・台湾」のバックナンバーの表紙(二瓶里美さん提供)
二瓶里美さんが手掛けた「な〜るほど・ザ・台湾」のバックナンバーの表紙(二瓶里美さん提供)

バナー写真=二瓶里美さん(二瓶里美さん提供)