東京「新宿ゴールデン街」で“ダサい客”にならずに楽しく飲む方法

暮らし

  • 大人数での訪問は避けて、小人数で行動
  • チャージ料など店の料金を事前に確認する
  • 店主や他の客を立て、長居はしない

東京都の調査では訪日観光客が最も訪れる都内の町は、銀座(49.7%)でも浅草(45.7%)でもなく、新宿・大久保地区(56%)である(東京都「平成29年度国別外国人旅行者行動特性調査」)。利用者数が1日平均350万人と世界一多い新宿駅を中心に、都庁がある西新宿の高層ビル群、老舗百貨店や家電量販店でのショッピング、新大久保のコリアンタウンなど魅力は多いが、「夜の観光地」としての同地区の人気も見逃せない。

ここ数年、目立って訪日観光客が増えている夜の盛り場が、新宿区歌舞伎町1丁目に位置する「新宿ゴールデン街」だ。国内外の人々を魅了する、少しあやしい雰囲気を持つ飲食店街をいかに楽しむか—。訪れる前に知っておきたい予備知識を紹介する。

2階にある人気店「ナベサン」に通じる階段。
ゴールデン街初心者には少し上りづらい

満喫するために心得ておくべき流儀

新宿ゴールデン街には通りごとに長屋状の建物が連なり、3坪(約10平方メートル)ほどの狭い店が300店近くも密集している。初めて足を踏み入れると、日本人でも敷居が高く感じ、店に入るのをためらうかもしれない。小さなドアから店内をのぞけば、店のスタッフや先客との距離がとても近いのだ。まずは楽しくお酒を飲むために、最低限踏まえておくと役立つルールがある。

落ち着いた雰囲気で、比較的入りやすい「BAR miki」の入り口

1,大人数での来店は避ける

どの店も小さく、立ち飲みのお店もある。一人で飲みに来ている客も多いので、大人数だと店の空気を壊してしまうことにもなりかねない。団体客お断りの店もあるので、訪れるなら1人か2人、多くても3人程度までにとどめておいた方が無難だ。

2,店の料金を事前に確認する

ゴールデン街では多くの店に、ドリンク代とは別でお通し代やチャージ料(席代)がつく。店によって幅があり、500円から1000円が相場。最近は、外国人向けにチャージの有無を店先に明示する店が増えたが、メニューさえ用意していない店もある。事前に料金を確認しながら飲めば、無用なトラブルを避けることができるだろう。

3,店主や他の客を立てる

飲みの場は無礼講といえども、なるべくスマートに飲みたいもの。カウンター内に立つ店主は、いわば一国一城のあるじであり、敬意を払って接したい。また、身内同士だけでしゃべらず、他の客と話すのも醍醐味(だいごみ)の一つだ。そのときも、適度な距離間をもって接しないと、人によっては絡み酒と取られるおそれがある。

「ナベサン」の壁に下がるメニュー

長居せず、いろいろな店をはしごしよう

それでは、実際にお店をのぞいてみよう。1970(昭和45)年ごろのゴールデン街は、多種多様な文化人が集い、朝まで酒を飲みながら議論を交わした場所だ。現在もその気風が残り、店主や常連客には、映画や文学、美術に精通する人が多く、自らアーティストやクリエーターとして活動する人もいる。

花園五番街にある「BAR miki」は、美術家として活躍する呉美樹さんが2016(平成28)年2月に開店した。こぎれいな店内には、美樹さん制作の木彫りの面や木材に絵を焼き付けるバーニングアートなどが展示されている。他のアーティストを招いた、写真展やライブイベントも頻繁に開催しているという。

「小さい店なのでお家だと思って、横に座ったお客さんとの会話を楽しんでください」(美樹さん)

美樹さんお手製の作品を眺めながら、会話とお酒を楽しむ

チャージ料がなく、初心者でも訪れやすいのが「CAMBIARE(カンビアーレ)」。その場で焼いてくれるピッツァ マルゲリータも1500円とお手頃価格。ダリオ・アルジェントの名作ホラー映画『サスペリア』の世界を再現した内装を見に、海外からホラーマニアも数多く訪れるという。

映画『サスペリア』の舞台となったバレエ学校がモチーフ

その場で焼いてくれるピザは絶品

そして、新宿文化華やかなりし頃の面影を今に残す人気店「ナベサン」にも訪れたい。1973(昭和48)年開店。オーナーのナオさんいわく、「ゴールデン街はそれぞれのお店のルールを把握して楽しんで。どうせ飲むなら、歴史を知って飲んだら一層面白いですよ」。

入りづらい2階の店ながら満員状態の「ナベサン」。さすが「老舗」の風格

狭い一帯に300軒近くの飲み屋がひしめくのだから、それぞれに特徴があり、居心地の良い店が必ずある。かといって、長居しすぎるのも野暮というもの。店が混んできたら、新しく来店した人に席を譲るのもゴールデン街流。はしご酒があたり前のこの町では、店主に「おすすめの店ありますか?」と聞けば、良い店をいくつか教えてくれる。ぜひ、一軒でも多くの店を楽しんでみてほしい。

酔客たちの楽し気な声は朝まで響き続ける

「BAR miki」

  • 住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-6 花園五番街
  • TEL:03-3202-3735

「CAMBIARE」

  • 住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-7 2F 花園三番街
  • TEL:03-3208-9461

「ナベサン」

  • 住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-8 2F 花園一番街
  • TEL:03-3208-0627

取材・文=山下 和樹
写真=久保 貴弘
(バナー写真:訪日観光客の姿が目立つ新宿ゴールデン街)

 

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