映画『凱歌』作品情報
- 出演:山内 きみ江、山内 定、中村 賢一、斉藤 くるみ、中島 萌絵、佐川 修
- 監督・撮影:坂口 香津美
- プロデューサー:落合 篤子
- 編集:坂口 香津美、落合 篤子
- 製作・配給:株式会社スーパーサウルス
- 公式サイト:https://supersaurus.jp/gaika/
予告編
もう一人の出演者 中村賢一さん
映画『凱歌』は、ドキュメンタリー映像作家の坂口香津美監督が、2009年11月から、多磨全生園で暮らす人々を追った記録だ。撮影開始から9年半を経て完成し、20年11月末に東京のシアター・イメージフォーラムでの公開にこぎつけた。
その間には、断種手術の苦しみをカメラの前で語った山内定さんや、全生園入所者自治会の会長を務めた佐川修さんが、この世を去った。
監督に園内のガイド役を買って出て、定さんの重い口を開かせようと働きかける中村賢一さんも、あれから約10年経って老いと病が進み、映画の中で子どもたちに配っていたメダカの飼育もやめて、床に伏すことが多くなった。
映画の公開後、そんな賢一さんに話を聞くと、つい最近も、NHKで放映されたハンセン病についてのテレビ番組に釘付けになったという。
「らい菌は31℃でないと生きられないというんだ。30℃でも32℃でもない。当時、日本人はわらじをはいていたでしょ。それで足の裏が31℃まで下がったときに感染したんだろうと。それくらいかかりにくい病気にかかってしまったんだと思うと、悔しくてね。一晩で3回も見てしまったよ」
映画の中では、ときに山内さん夫妻の気持ちを率直すぎるほどに代弁し、私たちを当惑させることもある賢一さんだが、それも人々に断種の苦しみを伝えんとする使命感の強さによるものだということを理解してほしい。自身は早い時期に治療を受けて完治し、社会に出て子どもにも恵まれたからこそ、それが果たせなかった定さんに語ってほしかったのだろう。
賢一さんは、映画の中で振り返った母の思い出を、私たちにも涙ながらに何度も話してくれた。入所してからしばらくの間、療養所の職員からやんわり止められるまで毎日、面会に来た母。戦後間もない頃の、交通手段も限られ、現在のように家族が宿泊できる施設もなかった時代の話だ。始発から電車を乗り継ぎ、駅からの長い道を歩いて、片道5時間以上をかけて毎日、息子の顔を見に来てくれた。別れ際に見送る母の背中をいまも繰り返し思い出しては、涙を流すのだという。


