世界で一番福島食材に詳しいシェフになる
喉が渇いていたので、炭酸水「奥会津金山天然炭酸の水」をもらった。最初に出てきた料理は、キジのコンソメだった。鳥類の風味が強烈なほど濃厚なスープが、冬の外気で冷えた体を温める。
「いわきのキジです。1羽4000円ぐらいします。なかなか手に入らない人気ものもです。身から出た濃いスープを味わいください。この炭酸水は、皇室にも献上され、伊勢志摩サミットの首脳会談でも提供されました」
萩さんも、元々のレストランでは、世界各国の高級素材を使っていた。しかし、震災によって各地のボランティアが福島を訪れる中で、福島の食材を食べた思い出を持って帰ってもらいたいと思うようになった。
「お土産って、土が産むと書きますよね。地元の土から生まれたものを食べてもらわないと、外から来た人たちには、土産話にはならないなと思ったんです。震災から他府県の人たちが来てくれて、地元の価値、福島の価値を逆に教えてもらいました。皮肉なことかもしれませんが、震災がなかったら、福島の食材をこれだけ考えてもらえることはなかったと思います。だったら、私は福島の食を日本一にしたいです。震災前は全国、世界の食材に精通するように店をやっていましたが、震災後は世界で一番福島の食材に詳しいシェフになれば誰にも負けないと思ったんです」
次に出てきたのは、会津の栗のムースだ。柔らかな栗の甘さがたまらない。
「この栗は、福島県民ですら、ほとんど知らないのですが、9月に収穫して冷凍保管しておくと、糖度が上がって26%を超えておいしくなります。それをムースにしてフランスのフォアグラのスフレにしました。焼き栗も添えています」
アルコールで合わせたのは福島のリンゴのシールド。沸き立つようなリンゴの香りがテーブルに立ち上った。

