福島の人々が一生懸命作ったものをお客さんと一緒に共有したい

次の料理は、シラウオやカキ、ダイコンなどが入ったスープの上に、タチウオを焼いたものが載っているユニークな一品だった。複雑なうまみが口の中に広がる。福島・豊国酒造の純米大吟醸「超」が出てきた。

福島・豊国酒造の純米大吟醸「超」(撮影:野嶋 剛)

「郡山のヒラタケから出る陸のだし、相馬のシラウオから出る海のだしの両方が入っています」

次はいわきウナギ。イメージにあるウナギのかば焼きとまったく違う処理だ。こういうウナギの食べ方もあるのか、と感嘆する。生きたままのウナギの皮を剝ぎ、備長炭であぶって、ワインのおりを煮詰めたソースを絡めている。

いわきウナギ(撮影:野嶋 剛)

「ウナギは養殖です。今の福島では、そもそも天然ものの食材は限られています。ジビエも、どんぐりを食べるので使えません。天然きのこも食べられません。天然きのこのスープのおいしさはみんな子供のころから私も覚えているので、今の子供たちに食べてもらえないのはかわいそうだと思います。でも、私は、人々が一生懸命手をかけて作ったものをお客さんと一緒に共有したいと思っています」

そう、福島には、今も食べてはいけないものもある。それらは全て分けられた上で、食べられるものも、度重なる検査を経てから、消費者に渡っている。一つ、質問をしてみた。お店に来て「福島は大丈夫ですか」と質問するお客さんはいないのだろうか。

「自分も元々はおっかなびっくりしていました。お客さんに『踏み絵』を踏ませるのではないかと心配もしていました。しかし、お客さんから一度も大丈夫ですかと言われたことはありません。ちゃんと検査したものは大丈夫だと思ってくれているのですね。今は私も自信を持ってお出ししています」