3 政府の財政中長期試算と「社会保障と税の一体改革」の問題点
成長率低迷なら大幅増税
大震災前に政府が描いていた財政展望(1月21日内閣府発表)によれば、名目成長率が1%半ばという慎重ケースでも、2020年には国と地方と合わせた基礎的財政収支(税収から利払いを除いた歳出を差し引いた収支)は23.2兆円(GDPの4.2%程度)の赤字と見込まれる。(*6)2020年度にこの収支を均衡させるためには、消費税で9.3%ポイントを上回る増税(1%の引き上げで2.5兆円程度の増収)が必要とみられる。あるいは思い切った歳出削減が不可欠である。
成長率が3%を上回るケースの場合、2020年度の基礎的財政収支の赤字は16.2兆円(GDPの2.5%程度)と見込まれるが、これは税収の伸びが歳出の伸びを上回るためである。しかし、このシナリオの実現性は極めて乏しい。成長率に関する想定が甘く、法人税減税などの税制改革の可能性があるため、この展望は画餅にすぎない。
このため、「社会保障と税の一体改革」の議論が進むことが期待される。2011年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部が改革案を公表した。(*7) この改革案は、2015年度までの場当たり的な案であるが、そこでは消費税率を2010年代半ばまでに段階的に10%までに引き上げることが最大の柱となっている。民主党政権はマニフェストで明記した「最低保障年金」(100%国庫負担)の実現はおろか、自公連立政権時代に法律で定められた基礎年金の国庫負担率50%を維持するための財源確保すら困難であることから、診療報酬と介護保険の改定を実現するためにも増税が不可欠となったことを認めざるを得なくなった。
消費税率引き上げから逃げる政権
だが、消費税率を10%に引き上げても、2015年度以降については、全く展望が描けていないことが問題である。さらに民主党のマニフェストとの関係が全く不明確であることで、民主党政権の基本的姿勢が問われている。今回の改革案は自公連立政権当時の政策を引き継いでいる。現行の社会保障制度の枠組みを維持する中で、消費税の引き上げに逃げ込んだといえよう。しかし、消費税の引き上げに関して、国と地方の取り分についての議論がなされていないことも露呈された。消費税率引き上げを提起するときには、それが持つ逆進性についての手当てを考慮すべきであるが、今回は全く触れられていない。民主党政権は、消費税率の引き上げ問題から逃げており、政権の正式な決定となることを回避している。この根本的な問題の先送りは、政権の弱体化と政策立案力の欠如を露呈しているとしかいいようがない。
