いまだ東アジアにさまよえる蒋介石の亡霊

馬英九総統は、1月28日、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の太平島を訪問した。台湾がいま太平島や東沙諸島を実効支配しているのは、1945年の日本の敗戦後、中華民国として南シナ海の「接収」に蒋介石が乗り出したからであり、1947年に中華民国が決めた「11段線(中国では9段線)」は、いまも中華人民共和国の南シナ海の島嶼領有の法的論拠となっている。米国や日本、中国、台湾も蒋介石の掌の上で踊っているといえば言い過ぎかもしれないが、アジアの今日になお蒋介石が大きな影響を及ぼし続けているのか、より深く認識されるべきだろう。

台湾の国防大学倉庫にいまなお保管されている白団が残したし資料群(提供:野嶋 剛)

昨年、スタンフォード大学フーバー研究所の研究員である林孝庭が著した『台海・冷戦・蒋介石:解密檔案中消失的台湾史 1958-1988』という本が話題になった。林孝庭は、本書で白団についてもかなりのスペースを割いて取り上げている。林考庭は本書のなかで、冷戦における蒋介石の果たした役割は過小評価されてきており、当時東アジアにおける米国の最も重要な同盟相手であった台湾を率いた蒋介石が、どのように米国の東アジア政策全般に影響を及ぼしたのか、さらに詳しい検討が必要だという論点を強調している。

蒋介石の亡霊は、東アジアの冷戦構造や中台分断という現実が消えない限り、この地域を今後もさまよい続けるに違いない。それは、蒋介石がこれからもなお語られるべきだということを意味している。

(2016年2月5日 記)

タイトル写真:白団メンバーらの記念撮影(提供:野嶋 剛)