我が町にも公園を。里長の秘策は
台北市は2021年中にインクルーシブ遊戯場を59、特色公園を39まで増やす計画だ。隣接する新北市も、この動きに追随。台北市を凌駕(りょうが)するスピードで、次々に公園を整備している。
台北市が既存の公園をリニューアルしているのに対し、新北市には新しくつくられた公園も多い。陶器の街として知られる鶯歌の、駅の南東側に位置する東鶯里には、公園がなかった。あるのは何十年も前に「公園予定地」に指定された土地だけ。それも2、30名の地権者に権利が分散していて、すべて買い戻すにはまとまった資金が必要だった。
そこで東鶯里の里長(*2)を務める陳陸賀さんは、「容積移転」という制度を利用することにした。
まず、各地権者に「公園をつくりたいから土地を売ってほしい」と数年をかけてお願いに回った。土地を買うのは、里でも市でもなく、ゼネコンだ。ゼネコンは土地を全て買うと、市に譲渡する。その代わり、提供した土地の広さに応じた容積率を、別の場所で建設するビルやマンションに移転し、より高層化できるのだ。
これで市は懐を痛めずに公園予定地の所有権を得、ゼネコンは別のところで利益を出せる。そして里は新しい公園を手に入れることができるというわけだ。この容積移転という仕組みは、歴史的建造物の保存にも活用されている。
実は日本にも、同じような「空中権の移転」制度がある。東京駅丸の内駅舎の復元工事を行った際、500億円にのぼる改修費用を、周辺のビルに空中権を売却することで賄(まかな)ったという話は、よく知られている。
こうして2019年3月、東鶯里に初めての公園が誕生。日本統治時代、この場所に火事を知らせるための鐘楼があったことにちなみ、「古鐘楼公園」と名づけられた。すべり台は在りし日の鐘楼に似せてつくられ、消防隊をモチーフにした遊具も設けられた。陳里長は「物語のある公園にしたかった」と語る。

