東里駅の引っ越し
その後も幾度か東里駅を訪ねた。藩さん、楊さんがいつもと変わらず迎えてくれた。邱さんのお宅を訪問するのも恒例となった。非番の藩さんや近所の人々が集まり、お酒も入って宴会となることもしばしば。
ある日「今日は泊まっていきなさい」という邱さんや、ご家族の言葉に甘える運びとなった。やさしい気遣いに気が緩んで深酒してしまったようだ。翌朝目が覚めたら邱さんが隣で寝ていて恐縮した。
そんな東里訪問を続ける中、花東線の玉里〜東里が高架上の新線に切り替わるという話を聞いた。ローカルチックな花東線も台北(八堵)から台東を結ぶ東部幹線の一部を担っている。地形上大きなカーブで迂回(うかい)するように敷かれた路線を、直線的に引き直してショートカット。運転時間の短縮を図るための工事が各地で進められた。計画によれば、東里駅は橋上へ移設され、現在の駅は役割を終えるという。そのたたずまいに一目ぼれして降り立った東里駅が、やがて廃止になるなんて……。
そして2007年3月30日その日がやってきた。最後の姿を見届けようと東里駅を訪ねていた。駅に着くと、藩さんと楊さんが軽トラックに荷物を積み込む作業をしているところだった。7年前、藩さんに招かれ歓待を受けた駅の事務室は、すっかり荷物が運び出され、ガランとしていた。
やがて、駅長の謝珍淡さんが東里駅から最後の列車を送り出すと全てが終わった。東里駅へ続くレールが切断され、線路は瞬く間に新線へ切り替えられた。


