【Photos】21世紀TOKYO建築

旅と暮らし

現代建築の実験場—かつて東京はそう呼ばれた時代があった。21世紀になって、東京はどう変貌しつつあるのか。建築都市TOKYOをめぐる旅へ出かけよう!

1. 東京スカイツリー
東京スカイツリー

新陳代謝する都市

世界中を見渡してみても、東京はかなり特殊な都市である。そのキャラクターを強めている重要な要素は、数々の現代建築。街を歩けば、必ずといってよいほど建築物を取り壊して新築している光景を目にする。

時代の要請としてスクラップ・アンド・ビルドからサスティナブルな都市環境へと移行しつつあるものの、地震大国でもある日本では、建物の老朽化に伴う建て替えは充分な説得力をもつため、活発な都市の新陳代謝が繰り返されてきた。

西欧の都市に比べ歴史や様式がもつ「都市の呪縛」から比較的自由な東京では、新しいスタイルの建築物が数多くつくられてきた。戦後の高度経済成長期(1960年代)からバブル期(1990年前後)まで、常識にとらわれずに発想する国内外の有能な建築家が個性を競い合い、東京はさながら「建築の実験場」となっていた。

公共建築から商業建築へ

2000年代に入るとグローバリズムに伴う、マンションなどの投機的な建設ラッシュが再発したが、それと同時に建築界には大きな変化が見られた。いわゆるラグジュアリーブランド、グローバル・ファッションブランドの自社ビル建設を伴う出店ラッシュである。

建築やインテリアスペースを中心に、都市の相貌(そうぼう)を見つめてきた写真家の佐藤振一は、「21世紀になってからの10年間は東京の建築物が質的に変容した時期だ」と言う。

「それまでは公共的な施設を設計していた建築家も、商業建築に積極的に関わるようになった。ブランドも建築家とのコラボレーションがトレンドとなり、建築を自らのアイデンティティを示す斬新な手段と見なすようになった」。

1. ザ ジュエルズ オブ アオヤマ

2. ザ ジュエルズ オブ アオヤマ
ザ ジュエルズ オブ アオヤマ

一流ブランド店が並ぶ港区南青山の御幸通りの一角に位置する、プラザ(広場)をはさんで2つの建物からなる施設。ライムストーンのルーバー(羽の向きによって雨や日光をさえぎるよろい戸)をリズミカルにあしらったメイン棟には「クロエ」「アニヤハインドマーチ」やレストランなどが、全面ガラス張りのコーナー棟には「カルティエ」のブティックが入っている。ダブルスキン(二重構造)のガラスファサードはダイヤモンドのカット面をイメージしたもの。ファサードや広場の取り方などは、隣のプラダブティック(11番の写真参照)と比較しても面白い。

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設計:光井純&アソシエーツ建築設計事務所
竣工年:2005年
所在地:東京都港区南青山5-3-2
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅徒歩3分

2. 東京ミッドタウン

3. 東京ミッドタウン
東京ミッドタウン

4. 東京ミッドタウン
東京ミッドタウン

大使館が数多く集まる国際色豊かなエリアに近接している六本木。旧防衛庁跡地につくられたこの大型複合施設には、ザ・リッツ・カールトン東京、130に及ぶ商業店舗、オフィス、住居、病院などが入る。サントリー美術館や21_21 DESIGN SIGHTのような文化施設も含まれ、アート&デザイン性の高さが前面に押し出されている。また、開発面積の約40%(約4ha)が緑豊かなオープンスペースとして確保されていることも特徴。

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設計:SOM(マスターアーキテクト)、Communication Arts,Inc.(商業空間)、隈研吾建築都市設計事務所(美術館棟、商業棟)、坂倉建築研究所(住居棟)、安藤忠雄建築研究所(Design Wing)、日建設計(コアアーキテクト)ほか
竣工年:2007年
所在地:東京都港区赤坂9-7-1
アクセス:都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅直結/東京メトロ千代田線「乃木坂」駅徒歩3分/東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅徒歩10分

3. 渋谷俯瞰パノラマ

5. 渋谷俯瞰パノラマ
5. 渋谷俯瞰パノラマ

人の欲求と経済活動を受け入れ常に変わり続ける街、渋谷。現在も渋谷駅東側では大規模な開発が進行中である。たくさんの人が一気に交差する駅前のスクランブル交差点は、いまや観光名所の一つ。行き交う多種多様な人々、賑やかな看板や広告、1つひとつが個性的な建物。東京という巨大な都市は混沌としているが、個性的な要素が混じり合いながら不思議な秩序を保っていることは、渋谷を5分も歩けば分かるはず。

<DATA>
アクセス:JR各線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線「渋谷」駅

4. 日本橋三井タワー

6. 日本橋三井タワー
日本橋三井タワー

日本を代表する金融街であり、老舗の商業施設が並ぶ日本橋。この地を発祥とする三井は、1929年に竣工した三井本館を保存しつつ隣接する超高層複合ビルを開発した。上階には日本初進出となるホテル、「マンダリン・オリエンタル東京」が入り、その他オフィスや店舗が入る。地震国日本では、建物が老朽化すると解体し新築する文化が根づいていたが、歴史と伝統を継承する再開発は街並みを保全する一つの手法として注目される。

<DATA>
設計:シーザー・ペリ アンド アソシエーツ ジャパン(デザインアーキテクト)、日本設計
竣工年:2005年
所在地:東京都中央区日本橋室町2-1-1
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」駅徒歩1分/JR総武線「新日本橋」駅徒歩3分/JR山手線・中央線「神田」駅徒歩7分

5. 国立新美術館

7. 国立新美術館
国立新美術館

2000平方メートルの展示室を7つ備える日本最大規模の美術館。コレクションを持たずに公募展や企画展を開催し、アートセンターとしての機能を備える。前面を覆うガラスカーテンウォールは波打つようにうねり、この曲面はエントランスロビーのアトリウムにも採り入れられている。黒川紀章が好んで用いた円錐形。アトリウムに設けられた逆円錐形のボリュームの上部は、レストランやカフェとなっている。アトリウムは街並みの一部として六本木エリアとつながる。

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設計:黒川紀章・日本設計共同体
竣工年:2006年
所在地:東京都港区六本木7-22-2
アクセス:東京メトロ千代田線「乃木坂」駅直結/都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅徒歩約5分

6. V28ビル(ヴェロックス28)

8. V28ビル(ヴェロックス28)
V28ビル(ヴェロックス28)

ファッションを中心とした若者文化の発信地、原宿の表参道側にあるビル。スペイン発のブランド「ZARA」やスポーツジムなどが入る。表参道に面して大胆に弧を描くガラス張りのファサードが特徴だ。しかし通りからは圧迫感はなく、エメラルドグリーンのガラス面は街路樹の緑に溶け込むようである。LED照明がいち早く採用されたビルであり、ファサードに仕込まれたライトによって夜は紫の明かりをまとい、妖艶(ようえん)な表情を醸しだす。

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設計:CDI青山スタジオ
竣工年:2002年
所在地:東京都渋谷区神宮前6-31-17
アクセス:東京メトロ銀座線・千代田線「明治神宮前〈原宿〉」駅徒歩1分

7. 東京国際空港(羽田)国際線旅客ターミナル

9. 東京国際空港(羽田)国際線旅客ターミナル
東京国際空港(羽田)国際線旅客ターミナル

東京の空の玄関口・羽田空港に2010年、新しい国際線ターミナルがオープンした。船底を思わせるリブ(ひだ)がダイナミックに弧を描く天井は、旅客の導線に沿って高くなり空の旅への期待感を演出している。出発ロビーより一層高いフロアに計画された商業ゾーンは「江戸小路(えどこうじ)」と呼ばれ、空港建築には珍しく天然木を用いて本格的な江戸の町並みを再現した凝ったつくり。日本的なスケールの「小路」が大屋根の大空間に違和感なく溶け込み、落ち着いた居心地の良い空間を提供している。

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設計:羽田空港国際線PTB設計/監理共同企業体(江戸小路・空の庭園:中村外二工務店 岸和郎+K.ASSOCIATES/Architects)
竣工年:2010年
所在地:東京都大田区羽田空港2-6-5
アクセス:京浜急行「羽田空港国際線ターミナル」駅/東京モノレール「羽田空港国際線ビル」駅

8. ブルガリ銀座タワー

10. ブルガリ銀座タワー
ブルガリ銀座タワー

ガラスの宝石箱をイメージしたという、イタリア宝飾ブランド「ブルガリ」のビル。路面に面したビル足元のショップ部分はオーセンティックな雰囲気を持つ石張りの外観で、3階より上階では透明感の高いガラス面を建物とは少し離して設置。夜には内側の縦長窓から光がにじみ出し、銀座の街を彩る。9・10階のレストラン&バーはアントニオ・チッテリオ&パートナーズの設計によるもので、2層吹き抜けの開放感のある空間が特徴。

<DATA>
設計:清水建設
竣工年:2007年
所在地:東京都中央区銀座2-7-12 アクセス:東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅徒歩1分/東京メトロ銀座線「銀座」駅徒歩3分

9. ニコラス・G・ハイエック センター

11. ニコラス・G・ハイエック センター
ニコラス・G・ハイエック センター

銀座の中央通りに面する細長いビルには、7つの時計ブランドのブティックとカスタマーセンター、また最上階にはイベントホールも設けられている。通常のショップでは1階だけが好条件になるところを、この建物では構成を反転。1階を裏通りと結ぶ壁面緑化したオープンストリートとし、全店舗の小さなショールームをここに配置。これらのショールームは油圧式のエレベーターで、アトリウムを通って上下階の各ブティックに直接アプローチする。

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設計:坂茂建築設計
竣工年:2007年
所在地:東京都中央区銀座7-9-18
アクセス:東京メトロ銀座線・日比谷線「銀座」駅徒歩5分

10. 東京中心部の眺め

12. 東京中心部の眺め
東京中心部の眺め

東京の東を占める下町エリアから、西側を俯瞰する。東京の中心・皇居とその近くの官庁街のほか、丸の内や東京など古くからのオフィス街、超高層ビルが立ち並ぶ新宿や汐留など新しいオフィス街、六本木や渋谷などの繁華街が点在。思い思いの形で、しかし経済合理性をもって建てられたビル群が遠くに連なる様子は、山脈のように見えてくる。東京都の昼間人口は約1500万人。毎日、この街で日々人間たちのドラマが繰り広げられている。

11. プラダブティック青山店

13. プラダブティック青山店
プラダブティック青山店

水晶体のような形状と質感をもつブランドビル。近くで見ると、網タイツのような斜め格子の構造体に、菱形のガラスが嵌めこまれていることが分かる。840枚のガラスは凹凸とフラットの3種類で、特注によるもの。周りに設けた広場とともに地震の揺れを逃がす免震構造が採用されており、建物の各部をスリムにするのに役立っている。インテリアは白を基調とした無柱空間で、菱形のチューブ上のトンネルが交差する近未来的なティストに溢れる。

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設計:ヘルツォーク&ド・ムーロン・竹中工務店
竣工年:2003年
所在地:東京都港区南青山5-2-6
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅徒歩3分

12. TOD'S 表参道ビル

14. TOD\'S 表参道ビル
TOD'S 表参道ビル

表参道のケヤキ並木をシルエットにしてファサードにあしらったビル。ケヤキの枝を模した樹木のパターンで、L字型をした建物の6つの壁面を構成。9本の樹木パターンはコンクリートの構造体で、間のガラスは梢から見える空を表す。ガラスは象嵌(ぞうがん)のようにフラットにはめこまれており、構造と装飾が一体となり抽象化したファサードが生まれた。

<DATA>
設計:伊東豊雄建築設計事務所
竣工年:2004年
所在地:東京都渋谷区神宮前5-1-5
アクセス:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道」駅徒歩1分

13. 東京スカイツリー

15. 東京スカイツリー
東京スカイツリー

東京の下町、墨田区にある電波塔。自立式電波塔としては世界一の高さとなる。634mという高さは、東京を含む昔の地域名「武蔵(634)」の読み方とかけられた。シルエットは伝統的な日本建築にみられるしなやかな曲線を踏襲し、約1300年前の五重塔に用いられている「心柱」の制震技術を現代に再現。その他、青みがかった白のカラーデザイン、青や紫で彩るライティングなど、日本の伝統的な美意識を踏襲することが試みられている。

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設計:日建設計
竣工年:2012年
所在地:東京都墨田区押上1
アクセス:東武伊勢崎線「とうきょうスカイツリー駅」駅徒歩1分/東武伊勢崎線・東京メトロ半蔵門線・京成押上線・都営浅草線「押上」駅徒歩7分

14. 六本木ヒルズ

16. 六本木ヒルズ
六本木ヒルズ

東京・六本木にある大規模な複合施設で、高層オフィスビル「六本木ヒルズ森タワー」を中心に、美術館や映画館などの文化施設、屋外型イベントスペース、ショップやレストランなど商業施設、ホテルや集合住宅、テレビ局社屋などで構成されている。タワー内のウェストウォークやセミオープンストリートのヒルサイドなど、複数のゾーンをつなぐ商業施設の空間は、敢えて来訪者が迷い周遊するような動線となっている。

<DATA>
設計:森ビル、入江三宅設計事務所、ザ・ジャーディ・パートナーシャル、コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツ、槇文彦/槇総合計画事務所、コンラン&パートナーズほか
竣工年:2003年
所在地:東京都港区六本木6-10-1他
アクセス:東京メトロ日比谷線「六本木」駅直結、都営地下鉄大江戸線「六本木」駅 徒歩4分/都営地下鉄大江戸線「麻布十番」駅徒歩5分、東京メトロ南北線「麻布十番」駅徒歩8分

15. メゾンエルメス(エルメス銀座店)

17. メゾンエルメス(エルメス銀座店)
メゾンエルメス(エルメス銀座店)

銀座の晴海通りに面して建つ、エルメスの旗艦店。ショップやオフィスのほか、ミュージアムやイベントスペースを擁する。最大の特徴は「マジック・ランタン」と呼ばれる全面ガラスブロックのファサード。外装全面はイタリアで製作された45cm角の大きなガラスブロック13000個で覆われている。日中は万華鏡のように店内を映し、夜はランタンのように建物全体が発光する。地震の衝撃を受け流す自律的な制振構造システムが採用されていることも特徴。

<DATA>
設計:レンゾ・ピアノ
竣工年:2001年
所在地:東京都中央区銀座5-4-1
アクセス:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座」駅徒歩1分

16. フォーラムビルディング

18. フォーラムビルディング
フォーラムビルディング

1階がピロティで開放され、端整なプロポーションをもったオフィスビル。シンプルに見せるためにこだわり抜いたディテールと、高い精度の加工や施工技術でつくられ、日本的な建築デザインの一端が感じられる。スレンダーな柱と梁(はり)はステンレスパネルで覆われているが、パネル同士の継ぎ目はほとんどなく、硬質で緊張感のある雰囲気を醸し出す。

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設計:谷口吉生
竣工年:2009年
所在地:東京都港区南青山2-24-11
アクセス:東京メトロ銀座線「外苑前」駅徒歩1分

17. 東京東部の眺め

19. 東京東部の眺め
東京東部の眺め

珍しく東京に雪が降った日、日本橋三井タワー(4番の写真参照)の「マンダリン・オリエンタル東京」の客室から、東京の東側を撮影したもの。東京東部には、隅田川や両国など比較的低層の建物が並ぶ下町の景色が広がる。街と街との間は切れ目なくつながり、大小さまざまな建物がびっしりと地平線まで続いていく。

【※旧サイト記事ページのマップを参考にGoogleマップ挿入】

文=加藤 純(建築ライター)
協力=『商店建築』編集部
撮影協力(東京スカイツリー)=東武ホテルレバント東京

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